AIを使うデメリット
この章では、AIの便利な側面だけでなく、安全に使うために知っておくべき注意点やリスク(デメリット)について解説します。
光があれば影があるように、AIにも気をつけなければならない点が存在します。
しかし、問題を正しく理解し、具体的な対策を知っておくことで、シニアの皆さんが不必要なトラブルを避け、安心してAIを活用できるようになります。
- デメリット(1)個人情報や秘密のリスク
- デメリット(2)AIの回答を鵜呑みにできない
- デメリット(3)無料と有料の違いを理解する必要
- デメリット(4)詐欺に悪用されるリスク
デメリット(1)個人情報や秘密のリスク
AIは非常に便利な相談相手ですが、家族や親しい友人に話すような感覚で、ご自身の個人情報を入力してはいけません。
例えば、氏名や住所、電話番号、詳しい健康状態といった大切な情報や、他人のプライベートな悩みなどを、ChatGPTのような対話型AIに書き込むのは避けましょう。
なぜなら、AIとの会話内容は、サービスを提供する会社のコンピューターに記録されたり、AIの学習データとして使われたりする可能性があるからです。
一度インターネットの世界に送られた情報が、意図せず外部に漏れてしまう可能性はゼロではないのです。
AIと会話する際は「誰かに聞かれても全く困らない内容」に限定することを、基本的なルールとして心に留めておきましょう。
大切な個人情報は、ご自身でしっかりと守るという意識を持つことが、安全なAI活用の第一歩となります。
デメリット(2)AIの回答を鵜呑みにできない
AIは物知りで、どんな質問にもすらすらと答えてくれますが、その答えを100%正しいと信じて鵜呑みにするのは危険です。
AIは人間のように物事の意味を理解して答えているわけではなく、膨大な情報の中から「それらしい答え」を組み合わせているに過ぎません。
そのため、時にはもっともらしい顔で、間違った情報や古い情報を答えることがあります。
特に注意したいのが、健康や医療に関する質問です。
AIのアドバイスを信じて、自己判断で薬を飲んだり、食事療法を始めたりするのは絶対におやめください。
必ず、かかりつけの医師や専門家に相談することが不可欠です。
法律やお金に関する情報も同様に、必ず役所の公式サイトで確認したり、専門家に相談したりして裏付けを取りましょう。
AIの答えはあくまで「下調べ」や「参考意見」と捉え、最終的な判断はご自身で行うという賢い使い方を心がけてください。
デメリット(3)無料と有料の違いを理解する必要
スマートフォンで使えるAIアプリやサービスの中には、「無料」で始められるものがたくさんあります。
しかし、この「無料」という言葉には注意が必要です。
多くのサービスでは、「最初の1ヶ月は無料」といったお試し期間が設定されており、その期間が終わると自動的に有料プランに切り替わって、翌月から料金が引き落とされる仕組みになっていることが多いのです。
もし続けるつもりがなければ、無料期間が終わる前に、ご自身で必ず「解約手続き」をしなければなりません。
ここで重要なのは、スマートフォンからアプリをただ削除しただけでは、契約を解約したことにはならないという点です。
料金の請求は続いてしまいます。
新しいアプリやツールを導入する際は、料金体系や解約方法を事前にしっかり確認し、お試し期間がある場合はカレンダーに終了日をメモしておくなど、自己管理を徹底することが不要な出費を防ぐための大切なコツです。
デメリット(4)詐欺に悪用されるリスク
残念ながら、AIの優れた技術は、私たちを騙そうとする詐欺にも悪用されています。
AIを使うことで、以前よりもずっと巧妙で、見分けるのが難しい手口が増えているため、注意が必要です。
例えば、AIは本物そっくりの声や映像を簡単に作り出せます。
これを利用して、有名な投資家が特定の金融商品を勧めているかのような偽の動画広告を作成したり、家族の声色を真似て電話をかけてきたりする詐欺が報告されています。
また、SNSなどで親しげに話しかけてきて、言葉巧みに個人情報を聞き出そうとする、AIのチャットボットを使った詐欺もあります。
このような新しい形の詐欺から身を守るためには、「うまい話には裏がある」「知らない人からの連絡はまず疑う」という基本的な心構えが、これまで以上に重要になります。
少しでも怪しいと感じたら、決して一人で判断せず、すぐに家族や警察、地域の消費生活センターに相談しましょう。
AI初心者がまず試したいこと
この章では、AIのメリットや注意点を理解した上で、「さあ、実際に使ってみましょう」と皆さんの背中をそっと押すための、具体的な最初のステップをご紹介します。難しいことは一切ありません。誰でも絶対に失敗しない、最も簡単で楽しい「はじめの一歩」です。この小さな成功体験が、AIのある快適な生活への扉を開いてくれます。
- (1) スマホで音声アシスタントを呼び出す
- (2) 「今日の天気は?」と聞いてみる
- (3) 俳句や短い手紙をAIに作らせる
(1) スマホで音声アシスタントを呼び出す
AIのある生活を体験するための最も簡単な第一歩は、お手元にあるスマートフォンに、まず声に出して呼びかけてみることです。特別なアプリを入れたり、難しい設定をしたりする必要はありません。この「音声アシスタント」という機能は、多くのスマホに最初から備わっています。文字を打つ必要がなく「声」だけで操作できるので、デジタル操作が苦手な初心者の方にとって、最も気軽に試せる方法です。ご自宅など、周りを気にしなくてよい場所で、お使いのスマートフォンに向かって呼びかけてみましょう。iPhoneなら「ヘイ、シリ」、Androidのスマホなら「オーケー、グーグル」と、少しはっきりした声で言うだけです。画面が光ったり、電子音が鳴ったりすれば、AIがあなたの声に気づいた証拠。AIとの対話の始まりです。まずは難しいことを考えず、この「呼びかけ」自体を楽しんでみてください。
(2) 「今日の天気は?」と聞いてみる
AIアシスタントを声で呼び出すことに成功したら、次は実際に何か質問してみましょう。おすすめは「今日の天気は?」という、私たちにとって最も身近な質問です。天気は誰もが毎日気にする情報なので、AIがすぐに役立つ存在であることを実感しやすいテーマだからです。また、答えがシンプルで分かりやすく、「自分の言葉がAIに通じた」「会話が成り立った」という、はっきりとした達成感を得ることができます。スマートフォンのマイクに向かって、呼びかけた後に「今日の天気は?」と尋ねてみてください。「今日の山梨県山中湖村の天気と気温を教えて」のように、具体的な地名を加えると、より正確な情報を教えてくれます。この簡単なやり取りを通じて、AIが自分の言葉を理解し、的確に反応してくれる「対話の楽しさ」と「驚きの便利さ」を、ぜひ体感してみてください。きっとAIへの親近感がぐっと湧いてくるはずです。
(3) 俳句や短い手紙をAIに作らせる
簡単な会話に慣れてきたら、次はAIの持つ「創造力」に触れてみましょう。これには「ChatGPT」などの対話型AIアプリが便利です。何かを調べるだけでなく、俳句や短い手紙といった、ちょっとした創作活動をAIにお願いしてみるのです。これは正解のない「遊び」なので、間違いを恐れずに楽しめます。例えば、スマートフォンのChatGPTアプリを開き、メッセージを打つ画面に「庭のあじさいの美しさを詠んだ俳句を3つ作って」と入力してみましょう。あるいは、「久しぶりに会う友人へ、元気かどうか尋ねる短い手紙の文章を考えて」とお願いするのも良いでしょう。AIが作った文章をそのまま使うのではなく、それをヒントにご自身の言葉で少し直してみれば、あっという間に素敵なオリジナル作品が完成します。AIを便利な道具としてだけでなく、面白い創作のパートナーとして活用することで、あなたのシニアライフを豊かにする新しい趣味や楽しみがきっと見つかります。
困ったときの相談先と学習の機会は?
この章では、AIを使い始めて「もっと詳しく知りたい」「操作がわからない」と感じた時や、万が一のトラブルに直面した時に、一人で抱え込まずに済むための具体的な相談先や学習の機会についてご紹介します。対面で直接教えてもらえる場所から、ご自宅で気軽に利用できる窓口まで、シニアの皆さんをサポートする選択肢はたくさんあります。安心してAIとの生活を楽しみましょう。
- (1) シニア向けAI教室・セミナーの紹介
- (2) 操作や契約トラブルの相談窓口
- (3) 無料で学べるオンライン動画やサイト
(1) シニア向けAI教室・セミナーの紹介
AIやスマートフォンの使い方を、基本からじっくりと学びたいとお考えなら、お住まいの地域の自治体や公民館、民間企業が開催しているシニア向けの教室やセミナーに参加するのが、最も確実で安心な方法です。同じようにAI活用を学びたい仲間たちと一緒に、専門の講師にその場で直接質問しながら、ご自身のペースで学ぶことができます。特に「シニア向け」と銘打った講座は、難しい専門用語を避け、参加者一人ひとりの理解度に合わせて丁寧に教えてくれるため、途中で挫折しにくいという大きな利点があります。まずは、山中湖村など、お住まいの市町村が発行する「広報誌」や、地域の公民館や生涯学習センターの掲示板や案内をこまめにチェックしてみましょう。「デジタル活用講座」といった名前で、AIの基礎に触れる講座が開催されていることがよくあります。一人で新しいことを始めるのが不安な方は、ぜひ地域の教室やセミナーを探してみてください。
(2) 操作や契約トラブルの相談窓口
AIアプリの操作で困った時や、「無料だと思ったのに料金を請求された」といった契約トラブルに遭ってしまった場合は、決して一人で悩まず、すぐに専門の窓口に相談することが最も重要です。専門の相談員が問題解決のための的確なアドバイスをくれますし、特にお金が絡むトラブルは、早く相談するほど被害を最小限に食い止められます。スマートフォンの操作に関する一般的な疑問は、契約している携帯電話会社のショップや電話サポートに問い合わせるのが基本です。そして、万が一の契約トラブルの際は、「188(いやや!)」という電話番号をぜひ覚えておいてください。この番号に電話をかけると、最寄りの「消費生活センター」に繋がり、専門の相談員に無料で話を聞いてもらえます。「こんな初歩的なことで電話していいのかしら」などとためらう必要は全くありません。困った時に頼れる場所を知っておくだけで、安心して新しいデジタル技術に挑戦できます。
(3) 無料で学べるオンライン動画やサイト
ご自身のペースで、好きな時間に自宅で学びたいという方には、YouTubeに代表されるオンラインの動画サイトを活用するのが非常に便利でおすすめです。教室に通う時間がなくても、ご自宅のパソコンやスマートフォンで、いつでもどこでも学習を進められます。特に動画による解説は、実際のスマートフォンの操作画面を見ながら説明してくれるため、本を読むよりも直感的に理解しやすいのが魅力です。分からない部分は、何度でも繰り返し見返すことができます。YouTubeの検索画面で、「シニア向け スマホ 使い方」あるいは「ChatGPT 初心者」といった言葉を入力してみてください。シニア世代の目線に立って、非常にゆっくり、丁寧な言葉で解説してくれるチャンネルがたくさん見つかります。まずは興味のある動画を一つ、気楽に見てみることから始めてはいかがでしょうか。たくさんの情報の中から、ご自身が「分かりやすい」と感じるものを選んで、楽しみながら学習を進めることが長続きの秘訣です。
まとめ
本記事では、AI初心者のシニアの方が抱える「難しそう」という不安を解消し、日常生活を快適にする方法を解説しました。AIは決して難しいものではなく、家事や健康管理、趣味の世界を広げてくれる心強い味方です。
セキュリティや費用といった注意点も、基本を理解すれば安心して活用できます。まずは、お使いのスマートフォンに「今日の天気は?」と話しかけてみてください。その小さな一歩が、AIへの抵抗感をなくす大きなきっかけとなります。AIを上手に暮らしに取り入れ、もっと便利で快適な毎日を手に入れましょう。
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