「2025年7月5日に日本で大災難が起きる」って話題になっていて、不安です。
気象庁長官は「現在の科学的知見では日時と場所、大きさを特定した地震予知は不可能です。デマと考えられる情報で心配する必要はない。」と会見で述べました。
「一方、日本ではいつどこでも地震が起こる可能性があるので、これを機に備えをお願いします。」と呼びかけました。
防災の必要性はテレビのニュースで感じるものの、情報が多すぎて何から手をつけて良いか分からず、後回しにしていませんか。
この記事を読めば、シニア世代の方が体力やお金に無理のない範囲で「自分で出来る備え」の具体的な手順が分かります。
本当に必要な防災グッズの超厳選リストから、家にあるもので出来る工夫、家具の安全対策、そして災害時の心構えまで、ポイントを絞って分かりやすく解説します。
漠然とした不安を「これなら私にもできる」という自信に変え、穏やかな毎日を送るための第一歩を踏み出しましょう。
シニア防災とは?まず始めるべき備えのポイント
この章では、体力やお金に頼らず、まず知っておくべき「シニア防災」の最も重要な3つのポイントを紹介します。
完璧な準備を目指すのではなく、「これだけ知っておけば、いざという時に落ち着いて行動できる」という安心感を得ることが目的です。
シニア世代の防災は、物を揃える前に、まずご自身の置かれた状況を正確に知ることから始まります。主に以下の内容があります。
- ハザードマップで自宅周辺の災害リスクを知ること
- 安全な避難場所とそこまでの道順を確認しておくこと
- 離れて暮らす家族と、いざという時の連絡方法を話し合っておくこと
ハザードマップで危険箇所を把握する
防災の備えと言っても、何から手をつければ良いか分からず、つい後回しになりがちです。
しかし、シニア世代が自分で出来る備えの第一歩は、体力もお金も必要ありません。
まず、お住まいの自治体が発行する「ハザードマップ」を見て、ご自宅周辺にどのような災害の危険があるのかを把握することから始めましょう。
洪水や土砂崩れ、地震による津波など、災害の種類は地域によって大きく異なります。
どのような危険が想定されているかを知ることで、いざという時に避難すべきか、あるいは自宅に留まる方が安全かを判断する重要な材料になります。
「この地域は昔から大丈夫」という考えは、時として危険な思い込みになりかねません。
客観的な情報を自分の目で確認し、自宅の状況を理解することが、ご自身と遠くに住むご家族の安心につながる防災対策の基本です。
ハザードマップは、市区町村のホームページで「(お住まいの市区町村名) ハザードマップ」と検索すれば簡単に見つかりますし、役所の防災担当課で紙の地図を入手することも可能です。
テレビを見ながら、お茶を飲む時間で構いません。
地図を広げ、ご自宅に色がついているかを確認する、このひとつの行動が、漠然とした不安を具体的な備えに変えるきっかけになります。
避難場所と安全な経路を事前に確認する
ハザードマップでご自宅に浸水や土砂災害などの危険性があると分かったら、次に考えるべきは「どこへ」「どのように」逃げるかです。
そのために、自治体が指定する避難場所と、そこへ至る安全な避難経路を事前に確認しておきましょう。
災害発生時には、いつも通っている道が倒れたブロック塀や割れたガラス、転倒した家具などで通れなくなっている可能性があります。
特にシニア世代の方にとっては、実際に歩いてみることで、避難場所までの正確な距離感や、途中の坂道の有無、休憩できる場所などを自分の体で把握しておくことが非常に重要です。
この事前の体験が、非常時のパニックを防ぎ、冷静な避難行動を助けてくれます。
晴れていて時間に余裕のある日に、ご家族やご近所の方との散歩がてら、一度目的の避難所まで歩いてみてください。
その際、「この道は狭くて危険だ」「このお宅の塀は古いから地震の際は離れよう」などと気づいた点をメモしておくと、より安全な経路を選ぶのに役立ちます。
また、避難先は指定避難所だけとは限りません。
ハザードマップで安全だと確認できる親戚や知人のお宅を、もしもの時の避難候補としてお願いしておくのも、心強い備えのひとつです。
家族との安否確認方法を決めておく
大規模な災害が発生した直後、最も心配になるのが離れて暮らす家族の安否です。
しかし、そのような時は安否確認の電話が殺到し、電話回線はほとんど繋がらない状態になることを想定しておく必要があります。
連絡が取れないことでお互いに不要な心配を募らせたり、ご家族が無理に駆けつけようとして二次災害に巻き込まれたりする危険を避けるため、事前に安否確認の方法を具体的に決めておくことが極めて重要です。
「もしも災害が起きたら、こうやって連絡を取り合おうね」というルールを決めておくだけで、いざという時の心の負担は大きく減ります。
その具体的な方法として、NTTが提供する「災害用伝言ダイヤル(171)」の活用があります。
このサービスは、毎月1日と15日、正月三が日、防災週間などに無料で体験利用が可能です。
この機会にご家族と時間を合わせ、「練習してみよう」と声をかけ、お互いにメッセージの録音と再生を試してみてください。
一度でも使い方を体験しておけば、その後の安心感が全く違います。
この練習は、ご家族と防災について話し合う良いきっかけにもなります。
「もしもの時は大丈夫だよ」と伝え合える準備こそが、何よりの防災対策です。
シニアが自宅で簡単にできる防災対策
この章では、シニア世代の方が、ご自宅で簡単にできる防災対策に絞ってご紹介します。
災害時、必ずしも避難所に行くのが最善とは限りません。
自宅に大きな被害がなければ、住み慣れた家で過ごす「在宅避難」が、心と体への負担が最も少ない選択肢です。
そのために、家の中の危険を減らし、安全な場所にしておく工夫を学びましょう。
主に以下の内容があります。
- 家具が倒れたり、物が落ちてきたりしないための工夫
- 一番無防備になる就寝中の安全を守る寝室の工夫
- 割れたガラスで怪我をしないための窓ガラスの対策
- 停電した暗闇で、まず自分の身を守るための枕元の備え
家具の転倒・落下を防ぐ工夫をする
具体的に何からすればいいの?
まずは、地震による怪我を防ぐため、ご家庭にある大きな家具には転倒防止の対策を施しましょう。
棚の上に物を飾らない、重いお皿や本は下の段に収納するなど、日頃の工夫で家の中の危険は一つずつ減らせます。
地震の際の負傷原因で最も多いのが、家具の転倒や落下です。
特にシニア世代の方は、転倒で大きな怪我を負うと、その後の避難行動が困難になります。
事前に家具の配置を工夫し、固定しておくことは、安全な避難経路を確保し、ご自身の生活空間を守るために不可欠な「減災」の取り組みです。
まずは費用のかからない対策として、重い物を下に置くだけでも重心が安定し、効果があります。
その上で、ホームセンター等で入手できる「突っ張り棒」や、テレビの下に敷く「耐震マット」の活用が手軽です。
ご自身での作業が難しいL字金具での固定などは、決して無理をしないでください。
お住まいの自治体によっては家具固定に補助金が出る制度もありますし、地域のシルバー人材センターに依頼すれば、専門家が比較的安価(費用は地域や作業内容によりますが、1箇所数千円からが目安)で対応してくれます。
こうした支援事業を知っておくだけでも、心の負担が軽くなります。
寝室に安全なスペースを確保する
寝室も心配だけど、何からすればいいの?
ご自身の命を守る防災対策として、他の何よりも優先していただきたいのが、寝室を家の中で一番安心できる場所にすることです。
具体的には、ベッドや布団の周りには、背の高い家具を置かない、これを徹底しましょう。
災害は、時と場所を選びません。
一日のうちで心身共に最も無防備になる就寝中に、もし大きな地震が発生したらどうなるでしょうか。
眠っている間にタンスや本棚の下敷きになってしまっては、身動き一つ取れず、助けを呼ぶことすらできなくなります。
だからこそ、まず寝室の安全を確保することが、シニアの防災では極めて重要なのです。
今すぐにでもできる具体的な対策は、家具の配置を見直すことです。
背の高い家具は、万が一倒れてきても就寝場所を直撃しない向きに置くか、可能であれば別の部屋へ移動させましょう。
また、地震の揺れでドアが開かなくなるのを防ぐため、出入り口の近くに倒れやすい物を置かないこと、そして足元に物を置かず、いつでも避難経路を確保しておく習慣が、ご自身の安全を守ります。
今夜、お休みになる前に、枕元からお部屋をぐるりと見渡してみてください。
その一手間が、安心な眠りにつながります。
窓ガラスに飛散防止フィルムを貼る
ガラスも心配だなぁ・・・
地震の強い揺れだけでなく、近年勢いを増している台風の際に、外から物が飛んできて窓が割れる危険も想定しておきましょう。
割れたガラスの破片が室内に飛び散るのを防ぐため、窓に「飛散防止フィルム」を貼っておくことをお勧めします。
割れたガラスは鋭い凶器となり、床に散らばっていると非常に危険です。
特に、夜間の停電で室内が真っ暗な状況では、気づかずに踏んでしまい、足に大怪我を負う可能性があります。
そうなると、避難所への移動はもちろん、家の中を動くことさえ困難になってしまいます。
飛散防止フィルムを貼っておけば、ガラスが割れても破片がフィルムに付着したままになるため、飛び散りを最小限に抑え、怪我のリスクを大きく減らすことができます。
フィルムはホームセンターなどで購入でき、ご自身で貼れるタイプも多いですが、大きな窓や高い場所での作業はシニアの方には大変な負担です。
決して無理はせず、専門の業者やお住まいの地域のシルバー人材センター、便利屋さんなどに相談することも大切な選択肢として覚えておきましょう。
まずは一番長く過ごすリビングや、安全を最優先したい寝室の窓から対策を始めてはいかがでしょうか。
懐中電灯を枕元に常備する
停電も心配だなぁ・・・
夜中の停電に備え、就寝中に地震が起きても、布団から手を伸ばせばすぐに届く「枕元」に、必ず懐中電灯を常備しましょう。
大規模な地震と停電は、セットで発生すると考えておくべきです。
夜間に突然、家中が真っ暗になると、方向感覚を失い、誰でもパニックに陥りやすくなります。
激しい揺れで物が散乱した暗闇の中、まず「明かり」を確保できるかどうかが、冷静さを取り戻し、安全な次の行動に移るための生命線となります。
懐中電灯は高価なものである必要はなく、100円ショップの小型LEDライトでも十分です。
停電時に自動で点灯する常備灯も便利です。
そして、懐中電灯と一緒に、ぜひ枕元に置いていただきたいのが、ガラス片から足を守る「スリッパ」と、少ない体力で助けを呼べる「ホイッスル」です。
これらを小さな袋にまとめておくと良いでしょう。
また、普段からメガネや補聴器、入れ歯など、ご自身にとって無くてはならない物も、決まった場所にまとめて置く習慣をつけておくと、いざという時に慌てずに済みます。
この記事を読み終えたら、まずご家庭の懐中電灯を一つ、枕元に置いてみてください。
この小さな備えが、万一の時にあなたを守る大きな力になります。
シニア向け防災グッズの必須チェックリスト
この章では、シニア世代の方が「これだけは必ず備えておきたい」防災グッズを、体力的な負担や入手のしやすさを考慮して厳選してご紹介します。
防災グッズと聞くと、重たいリュックサックを想像して気後れしてしまうかもしれませんが、心配はいりません。
大切なのは、たくさん詰め込むことではなく、ご自身の命と健康、そして避難先での尊厳を守るために「本当に必要なもの」を見極めることです。
ここでは、体力に自信がない方でも無理なく準備でき、いざという時に心から「あってよかった」と思えるアイテムを具体的に解説します。
- 命に直結する「常備薬」と「お薬手帳のコピー」
- 普段の生活に欠かせない「杖・補聴器・メガネ」など
- 避難所での体への負担を減らす「携帯クッション」
- 気力や体力が落ちた時でも口にしやすい「レトルト食品やゼリー」
- 安全な避難の第一歩となる「使い慣れた靴」
常備薬とお薬手帳のコピー
防災グッズを準備する上で、持病をお持ちのシニア世代の方が他の何よりも優先すべきもの、それは毎日服用している「常備薬」です。
災害時には交通網が止まり、医療機関も混乱するため、いつも通りに薬が手に入るとは限りません。
薬が切れてしまうことは、命の危険に直結する深刻な事態です。
そのため、普段飲んでいる分とは別に、最低でも7日分、できればそれ以上の予備を、すぐに持ち出せる非常用持ち出し袋に必ず入れておきましょう。
そして薬と必ずセットで備えたいのが「お薬手帳」です。
これは、避難先で初めて会うお医者様や薬剤師の方に、ご自身の正確な医療情報を伝え、適切な処置を受けるための「命のカルテ」になります。
万が一の紛失に備え、お薬手帳の全ページをスマートフォンのカメラで撮影したり、遠方に住むご家族にコピーを渡しておいたりすると、さらに安心です。
この薬の準備こそ、「子どもに迷惑をかけたくない」というお気持ちを形にする、最も重要で確実な「自分で出来る備え」の一つなのです。
杖・補聴器・メガネなど普段使うもの
一般的な防災グッズのリストでは、どうしても見落とされがちですが、ご自身の日常生活に欠かせない個人的なアイテムこそ、災害時の生活の質を支える重要な備えです。
例えば、普段お使いの「メガネ」や「老眼鏡」がなければ、配給のお知らせを読んだり、周囲の状況を正確に把握したりすることができません。
地震の揺れで壊れてしまう可能性も考え、予備を一つ、衝撃に強いケースに入れて持ち出し袋に用意しておくと安心です。
また、「補聴器」は、避難指示や救助を求める声を聞き取るための命綱です。
本体と一緒に、予備の電池を多めに(10日分以上を目安に)準備しておくことを忘れないでください。
「入れ歯」がなければ、そもそも食事をとることができず、体力の低下に直結します。
専用のケースと洗浄剤をひとまとめにしておきましょう。
安全な移動に必要な「杖」は、持ち運びしやすい折りたたみ式のタイプも便利です。
これらは特別な防災用品ではありません。
ご自身の「体の一部」であり、日頃の生活を守るための、最も基本的な防災グッズなのです。
エコノミークラス症候群(深部静脈血栓症)を防ぐために
避難所に行くなら、何に気を付ければいいの?
万が一、避難所で夜を明かすことになった場合、体育館などの硬く冷たい床は、シニア世代の体には想像以上の負担となります。
長時間同じ姿勢でいることで腰やお尻が痛くなるだけでなく、血行が悪くなり、エコノミークラス症候群などを引き起こす危険も高まります。
硬い床での長時間不動は、肺塞栓症による突然死に繋がりかねない深刻なリスクです。
厚生労働省は予防策として、(1)こまめな水分補給、(2)足首の運動、(3)ふくらはぎのマッサージなどを明確に推奨しています。
そんな時に、一つあるだけで体の負担を劇的に和らげ、体力の消耗を防いでくれるのが「携帯クッション」です。
防災グッズとしてはあまり注目されませんが、避難生活の質を保ち、エコノミークラス症候群(深部静脈血栓症)を防ぐ補助具として非常に有効なアイテムです。
高価で立派なものである必要は全くありません。
100円ショップなどで手に入る、空気で膨らませるタイプのエアクッションや、折りたたんで小さくなる携帯用の座布団は、軽くてかさばらないので非常用持ち出し袋の隙間に入れるのに最適です。
もし適当なものがなければ、普段お使いのタオルを一枚、防災袋に余分に入れておくだけでも立派な代用品になります。
この少しの工夫が、いざという時のあなたの生活を助け、大きな安心感につながる、費用対効果の高い賢い備えと言えるでしょう。
食べやすいレトルト食品やゼリー
食料はどうすればいいの?
災害時のための非常食として、乾パンやアルファ米がよく推奨されます。
シニア世代の方はもちろん、災害による強いストレスや慣れない環境での疲れから、食欲が落ちてしまうことは誰にでもあります。
そんな時に本当に助けになるのは、無理なく口に運べて、すぐにエネルギーになる食事です。
そこで非常食としてぜひ用意していただきたいのが、普段から食べ慣れているような、やわらかい「レトルト食品」や「栄養補助ゼリー」です。
温めなくてもそのまま食べられるレトルトのお粥やスープ、ドラッグストアで手軽に買えるゼリー飲料などは、水分と栄養を同時に補給でき、食欲がない時でものどを通りやすいので大変便利です。
果物の缶詰や、甘くてエネルギー転換の早い「ようかん」なども良いでしょう。
また、災害時は支援物資がおにぎりやパンなどに偏りがちで、タンパク質、ビタミン、食物繊維が不足し、持病(特に糖尿病など)を持つ高齢者の健康状態を悪化させるリスクがあります。
タンパク質(魚や肉の缶詰、レトルト)や野菜(野菜ジュース、長期保存可能なスープ)も意識して備えましょう。
これらは、普段の買い物で少し多めに買っておき、賞味期限の古いものから消費する「ローリングストック法」で備蓄するのが、経済的で無理なく続けられるコツです。
食べ慣れた味が、災害時の不安な心を和らげてくれるはずです。
使い慣れた靴を玄関に準備する
避難する時は、何に気を付ければいいの?
地震が発生した直後、家から外へ安全に避難するための第一歩は、ご自身の足元を守ることから始まります。
大きな揺れによって、家の中や建物の周りには、割れた窓ガラスの破片や、棚から落ちた食器の破片、ブロック塀のかけらなどが散乱している危険性が非常に高いです。
そのような状況で、普段室内で履いているスリッパや、ましてや素足のまま慌てて外に出てしまうと、足の裏に深い怪我をしてしまうかもしれません。
そうなれば、その後の避難行動に深刻な支障をきたしてしまいます。
そこで、日頃からの備えとして、すぐに履いて外に出られる「使い慣れた靴」を、玄関に一足常に準備しておくことを強くお勧めします。
ポイントは、新品ではなく「履き慣れた」靴であることです。
いざという時に靴擦れを起こしてしまっては元も子もありません。
普段からご自身の足に馴染んでいて、歩きやすく、靴底が厚くて丈夫なスニーカーなどが最適です。
枕元に室内用のスリッパを置く備えと、玄関に外用の靴を置く備え、この二段構えが、あなたとご家族の安全な避難を力強くサポートします。
家にあるもので防災対策をするメリット
この章では、高価な防災グッズを買い揃えなくても、ご家庭にある身近なものを活用して賢く備える方法とその利点について解説します。
「防災にはお金がかかる」というイメージがありますが、決してそんなことはありません。
シニア世代の皆様が長年の暮らしの中で培ってきた「知恵」こそが、最高の防災スキルになります。
お金をかけずに、今すぐ始められる工夫を見ていきましょう。
主に以下の内容があります。
- 年金暮らしでも安心。費用をかけずに始められること
- 「もったいない」の知恵が生きる。普段のものが防災グッズに早変わりすること
費用を抑えて防災対策ができる
防災対策を始めたいけれど、費用が心配・・・
「防災にはお金がかかる」というイメージが、準備をためらわせる大きな原因になっています。
しかし、ご安心ください。特別な防災グッズを一度に買い揃えなくても、ご家庭にあるものや100円ショップのアイテムを上手に活用すれば、費用をほとんどかけずにしっかりとした備えを始めることが可能です。
例えば、非常時に必要な飲料水も、一度にケースで買うと大きな出費ですが、普段のお買い物のついでに一本ずつ買い足していく「ローリングストック法」であれば、家計に大きな負担をかけずに済みます。
また、懐中電灯や軍手、衛生用品のウェットティッシュといった基本的な防災用品も、最近では100円ショップで品質の良いものが驚くほど安価に手に入ります。
まずは「何か特別なものを買う」と考えるのではなく、「家にあるもので何が使えるだろう?」と宝探しのような感覚で家の中を見渡してみませんか。
その考え方こそが、お金の心配をせずに、防災の第一歩を軽やかに踏み出すための大切な鍵となります。
普段使いのアイテムが非常時に役立つ
新聞紙やゴミ袋、台所にある食品用ラップなど、どこのご家庭にでもある日用品が、いざという災害時には、驚くほど優れた防災グッズに早変わりすることをご存知でしょうか。
災害の備えで大切なのは、一つのものが多様な役割を果たす「多機能性」です。
普段から使い慣れているものは、いざという時にも応用が利きやすく、特別な訓練なしで直感的に活用できるため、シニア世代にとって非常に心強く、実践的な備えと言えます。
例えば、読み終えた新聞紙は、くしゃくしゃにして服の中に詰めれば空気の層ができて優れた防寒着になりますし、簡易トイレの吸水材としても役立ちます。
大きめのゴミ袋は、頭と腕を出す穴を開ければ簡易的なレインコートに、リュックの中に入れて二重にすれば水の運搬袋にもなります。
食品用ラップは、お皿に被せてから食事をすれば食器を洗う必要がなくなり、断水時の貴重な水を節約できます。
モノを大切にするシニア世代の皆様の「暮らしの知恵」は、最高の防災スキルです。
ご自身の豊富な経験を活かせば、ご家庭にある何気ない日用品が、防災グッズの宝庫に変わるのです。
家にあるもので防災対策をするデメリット
この章では、家にあるものを活用した防災対策の、知っておきたい注意点や限界について解説します。日用品の活用は、費用を抑え、すぐに始められる素晴らしい第一歩です。
しかし、その上で、専門的な防災グッズが持つ利点や、代用品だけでは不十分な場合があることも理解しておくと、より万全な備えにつながります。
これは、皆様の工夫を否定するものではなく、さらなる安心を得るための次のステップのご提案です。主に以下の内容があります。
- 専用品と比べた場合の機能性の違いについて
- 本当に深刻な事態に陥った際、それだけでは足りない可能性について
専門的な防災グッズよりも機能性が劣る場合がある
家にあるものを活用する工夫は大変素晴らしいですが、専用に開発された防災グッズと比較すると、いざという時にその機能性や耐久性で見劣りする場合があることも知っておきましょう。
専用品は、過酷な災害の状況下で、確実に命や健康を守るための機能が追求されています。
特に「防寒」「衛生」「情報収集」といった、シニア世代の安全に直結する分野では、その差が顕著に現れる可能性があります。
例えば、防寒対策として新聞紙を体に巻いても暖は取れますが、手のひらサイズにたためて体温を逃さない「アルミ製保温シート」の圧倒的な保温力には及びません。
また、ゴミ袋で作る簡易トイレはあくまで応急処置ですが、専用の「携帯トイレ」は排泄物を瞬時に固める凝固剤や防臭袋がセットになっており、衛生面とプライバシーへの配慮が格段に優れています。
まずは家にあるもので備え、その後、予算に余裕ができた時に、こうした命に関わるアイテムから少しずつ専用品に切り替えていくのが、賢く無理のない防災対策の進め方です。
緊急時に十分な備えにならない可能性がある
日用品の活用は、あくまで「応急処置」や「補完的な備え」という側面が強いことを心に留めておくことも大切です。
もし、家にあるもので工夫するだけで防災対策を終えてしまうと、本当に深刻な事態に陥った際、肝心なものが「不足」したり、「役に立たない」という危険性があるからです。
例えば、普段の食品を少し多めにストックしておく「ローリングストック法」は非常に有効ですが、うっかり賞味期限を切らしてしまうことも考えられます。
5年以上の長期保存が可能な専用の非常食や保存水をいくつか備えておくと、管理の手間が省け、いざという時の心の余裕が生まれます。
また、応急手当で食品用ラップが役立つという話も聞きますが、極めて危険です。
やはり消毒薬や絆創膏、滅菌ガーゼなどが揃った「救急セット」があれば、より幅広い怪我に的確に対応でき、感染症を防ぐことにも繋がります。
誤った自己判断はせず、まずは清潔な布で強く押さえて圧迫止血を試みてください。
「応急手当 止血 方法 日本赤十字社」などで検索すれば、正しい止血法に関する公式な情報が得られます。


防災グッズの効率的な分け方・収納術
この章では、準備した防災グッズを「いざという時に、いかにスムーズに使えるか」という視点から、効率的な分け方と収納のコツを解説します。
「非常用持ち出し袋」と「家に置いておく備蓄品」の違いを明確にし、シニア世代の体力的な負担も考慮した、今日からできる賢い管理術をご紹介します。
せっかくの備えを無駄にしないための、大切な仕上げのステップです。主に以下の内容があります。
- いざという時にすぐ行動するための「持ち出し用」グッズの置き場所
- 体力に自信がなくても大丈夫。重いものを分散させて保管するコツ
- 無理なく無駄なく続けられる。賢い食品管理術「ローリングストック法」
持ち出し用は玄関や枕元に配置する
準備しても、どこに置けばいいの?
防災グッズは、その役割に応じて置く場所を決めるのが鉄則です。
まず、避難時にすぐに持ち出すべき薬や貴重品、携帯ラジオなどを入れた「非常用持ち出し袋」は、必ず玄関に置きましょう。
避難指示が出た際に、慌てて部屋の奥から取り出すのでは間に合いません。
玄関にあれば、靴を履くと同時にさっと手に取って行動できます。
そしてもう一つ、就寝中のあなたを守るための最低限のグッズは「枕元」です。
夜中に突然の地震が起きても、布団から手を伸ばせば届く範囲に「懐中電灯」「スリッパ」「ホイッスル」を置いておけば、まずは落ち着いて明かりを確保し、安全確認と次の行動に移れます。
メガネや杖が手放せない方は、それらも必ず枕元に。
この「玄関」と「枕元」への配置は、防災の基本中の基本です。
今夜、懐中電灯とスリッパを枕元に置くだけでも、大きな安心感が得られるはずです。


備蓄品は分散して保管する
飲料水や食料、カセットコンロといった、在宅避難で必要になる重くてかさばる備蓄品は、一か所にまとめて置くのは避けましょう。
シニア世代にとって安全で賢い方法は、家の数か所に「分散して保管」することです。
その理由は二つあります。
一つは、ご自身の体への負担を軽くするためです。
すべての備蓄品を一つの箱に詰めると非常に重くなり、いざという時に取り出そうとして腰を痛めてしまう危険があります。
もう一つは、リスクの分散です。
万が一、地震で家具が転倒し、一つの収納場所が塞がれてしまっても、他の場所に分けて保管しておけば、すべての備えが無駄になるという最悪の事態を防げます。
例えば、2Lの水のペットボトルを数本ずつ、物置と台所の棚、廊下の収納スペースなどに分けて置くのです。
キャスター付きの収納ボックスを使えば、重いものでも楽に移動でき、お掃除の際にも便利です。
防災の備えを「重労働」にしない、やさしい工夫を取り入れましょう。


ローリングストック法で食品を管理する
ローリングストックって何?
災害時の食料備蓄で最もおすすめしたいのが、「ローリングストック法」という考え方です。
これは、特別な非常食を別に買うのではなく、普段ご家庭で食べている缶詰やレトルト食品、乾麺などを「少しだけ多めに買い置きし、賞味期限の古いものから順番に食べ、食べた分だけをまた買い足す」という、賢い備蓄のサイクルです。
この方法なら、いざという時のためにと買った高価な非常食の味に馴染めなかったり、気づいたら賞味期限が切れていて無駄にしてしまったり、という失敗がありません。
普段の食生活の延長で、無理なく、無駄なく、自然に災害への備えができます。
管理のコツは、缶詰などを棚にしまう際に「新しいものを奥、古いものを手前」に置くこと。
油性ペンで買った年月を大きく書いておくと、さらに分かりやすくなります。防災を「特別なこと」と考えず、いつもの暮らしの中に溶け込ませる。この方法なら、きっと長く続けられるはずです。次の買い物の日、お好きな缶詰を一つだけ多くカゴに入れてみませんか。
シニアが安全に避難するために必要な準備とは?
この章では、防災グッズなどの「モノの備え」から一歩進んで、ご自身の命を守るための「行動の備え」と「人とのつながりの備え」について解説します。
いざという時に慌てず、安全に避難するためには、いくつかの知識と、ほんの少しの周りとの連携が大きな力になります。
「一人暮らしだから不安」というお気持ちを、「いざとなったら頼れる仕組みがある」という安心感に変えるための、具体的な準備を見ていきましょう。
主に以下の内容があります。
- 大雨や台風の時、「いつ」逃げるべきかの明確な基準
- いざという時の動きを体で覚える、地域の防災訓練への参加
- 「助けが必要」と事前に知らせておく公的な仕組みの活用
- ご近所との小さなつながりが生む、大きな安心感
避難開始のタイミングを理解する
大雨や台風のニュースで様々な情報が流れると、一体いつ逃げれば良いのか分からなくなり、不安になるものです・・・
しかし、覚えるべきルールは非常にシンプルです。
お住まいの自治体から「警戒レベル3:高齢者等避難」が発令されたら、それが「避難を開始する合図」だと覚えてください。
なぜなら、シニア世代の方は、移動や準備に時間がかかる可能性があるからです。
レベル3から4に至る間に、状況は単に『困難』から『不可能』に変わる可能性が高いです。
「穏やかだった流れが人を押し流す濁流に変わる」「立っていられないほどの強風になる」といったことから、レベル3での避難が「選択」ではなく「必須」なのです。
内閣府が発行している公式のガイドラインで、その根拠が明記されています。
ご自身の安全を確実に守るためには、早め早めの行動が何よりも大切です。
テレビやラジオで「警戒レベル3」という言葉を聞いたら、すぐに非常用持ち出し袋を手に取り、安全な場所(浸水の心配がない親戚や知人の家、あるいは頑丈な建物の上の階など)へ移動を始めましょう。
この一つのルールを知っているだけで、いざという時の迷いがなくなり、冷静な判断ができるようになります。
地域の防災訓練に一度は参加する
いざという時に慌てずに行動するためには、やはり一度、体を動かしてみるのが一番です。
もし、お住まいの地域で防災訓練が実施される機会があれば、ぜひ勇気を出して参加してみることをお勧めします。
避難場所までの道のりは、地図で知っているのと、実際に歩いてみるのとでは大違いです。
道のりの勾配や、危険なブロック塀の有無など、歩いてみて初めて気づくことがたくさんあります。
また、訓練への参加は、地域の消防団や民生委員、役所の担当者といった方々に「ここに住んでいますよ」とご自身の顔を覚えてもらう絶好の機会にもなります。
この「顔の見える関係」が、万が一の時にあなたを見つけてもらうための、何よりの助けになるのです。
当日は、すべての訓練に最後まで参加する必要はありません。
「指定された避難場所まで、自分のペースで歩いてみるだけ」「炊き出しのカレーをいただきに行くだけ」そんな気軽な気持ちで構いません。
その小さな一歩が、地域とのつながりを生み、あなた自身の防災への自信を高めてくれるはずです。
避難行動要支援者名簿に登録する
お一人での暮らしや、体力的な事情で、災害時に自力で避難することに不安を感じていらっしゃる方は、ぜひ「避難行動要支援者名簿」という制度を知っておいてください。
これは、お住まいの市区町村が、災害時に支援が必要な方の名簿をあらかじめ作成しておく公的な仕組みです。
この名簿に登録しておくことで、大雨による避難指示が出た際や、大きな地震が起きた際に、自治体の職員や地域の支援者(民生委員や自主防災組織の方々)が、優先的にあなたの安否確認や避難の手助けに来てくれる可能性が高まります。
これは、「助けが必要になるかもしれません」と事前に公的に手を挙げておく、ご自身の命を守るための非常に大切な備えです。
さらに近年の法改正により、この避難行動要支援者名簿情報を基に、より実効性の高い「個別避難計画」の作成が市町村の努力義務となりました。
いざという時に慌てず、安全に避難できるよう、新しい取り組みが始まりました。
それが「個別避難計画」です。
これは、お一人お一人の状況に合わせて、「誰が、どこへ、どうやって避難のお手伝いをするか」を、あらかじめ決めておく計画のことです。
2024年の能登半島地震では、この計画の有無が生死を分ける可能性があることが浮き彫りになりました。
「人に頼るのは申し訳ない」などと思う必要は全くありません。
自分の力でできる備えをしつつ、いざという時のために社会の仕組みを賢く利用することは、自立した生活を送る上での立派な防災活動です。
まずはお住まいの役所の福祉課や防災担当課に、電話一本、「名簿について聞きたい」と問い合わせることから始めてみましょう。
信頼できる近所の人に協力を求める
公的な制度や仕組みとあわせて、あなたのすぐそばにいる「ご近所さん」との関係は、何物にも代えがたい安心材料になります。
昔から「遠くの親戚より近くの他人」と言いますが、大災害の時、救急車や消防車はすぐには来てくれないかもしれません。
そんな時、最終的に頼りになるのは、すぐ隣に住んでいる人の存在です。
日頃から挨拶を交わしたり、短い会話をしたりする、そのささやかな積み重ねが、いざという時の助け合いの土台となります。
「もしもの時は、お互いに声をかけ合いましょうね」と、普段から挨拶を交わしているお隣さんや、趣味のサークルで顔を合わせる人に、それとなく話してみるのがおすすめです。
もし可能であれば、ご自身の持病のことや、遠方に住むご家族の連絡先などを、特に信頼できる方に伝えておくと、さらに安心です。
大げさな「お願い」をする必要はありません。
「いつも気にかけてくださって、ありがとう」という感謝の言葉や、お庭で採れた野菜のおすそ分けといった、小さな交流の積み重ねが、あなたを孤立から守る、地域での一番の備えになるのです。
まとめ
この記事では、シニア世代の方がご自宅でできる安全対策から、本当に必要な防災グッズの準備、そして公的支援やご近所との連携まで、自分で出来る備えを具体的に解説しました。
防災は、完璧を目指す必要はありません。「子どもに迷惑をかけたくない」というそのお気持ちは、まず身近な備えを一つずつ始めることで、確かな自信と安心に変わります。
難しく考えず、まずは今夜、枕元に懐中電灯とスリッパを置くことから始めてみませんか。
その小さな一歩こそが、あなたと大切なご家族の未来を守る、最も力強い備えとなるはずです。
※本記事は、以下の公的機関の情報を参考に作成しています。
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