年齢を重ねて食が細くなった、毎日の料理が少し負担に感じる…。そんなシニア世代のお悩みはありませんか。体にやさしく栄養満点のスープを取り入れたいけれど、自分に合う料理本がどれか分からず迷ってしまいますよね。
この記事を読めば、あなたのライフスタイルや健康の悩みに寄り添う、最適なシニア向けスープの料理本が見つかります。
調理が簡単なレシピから、減塩・高たんぱくなど健康を気遣う一冊、夫婦二人分にぴったりの分量まで、選び方のポイントと共にご紹介します。
あなたに最適な料理本と共に、温かいスープで心も体も満たされる豊かな食生活を始めましょう。
シニア向けスープ料理本はどう選ぶべき?
この章では、シニア世代の食の3大悩み「タンパク質などの栄養不足」「作る気力の減少」「食事量の減少」を解決できるスープ料理本の選び方について詳しく解説します。
2024年から2025年にかけては、石原洋子さんの最新スープ本をはじめ、シニア向けに特化した料理本が数多く出版されています。適切な一冊を選ぶためには、以下の4つの観点に注目しましょう。
- 栄養バランスが科学的根拠に基づいて考えられているか
- シニアでも無理なく続けられる調理手順になっているか
- 噛む力・飲み込む力の低下に配慮した食べやすさへの工夫があるか
- 少量調理と作りおき・冷凍保存の方法が実践的に紹介されているか
選び方(1)栄養バランスが考慮されているか確認する
シニア向けスープ料理本を選ぶ際は、管理栄養士による監修や栄養成分表示の記載があるかを必ず確認しましょう。高齢者は噛み切りにくい肉類や硬い野菜を敬遠しがちで、タンパク質やビタミン、ミネラル、食物繊維が不足する傾向があります。優良な料理本では、1食で20g以上のタンパク質摂取を目指したレシピ設計や、減塩でも美味しく仕上がるだしの取り方が詳しく解説されています。また、栄養バランスは1日で完璧にしなくても、数日間でバランスを取れば問題ありません。そのため、スープという一品料理でどれだけ効率よく栄養を摂れるかが重要なポイントです。
購入前にはレビューで「栄養バランスが良い」「管理栄養士推奨」といった評価があるかも参考にすると良いでしょう。
選び方(2)調理手順が簡単で分かりやすいかを見る
シニア世代でも無理なく使い続けられる料理本を選ぶには、3ステップ以内で完成する簡単なレシピが豊富に掲載されているかを確認しましょう。2025年のシニアトレンドでは健康志向の高まりと同時に、料理に費やす時間や体力を効率化したいニーズが高まっています。電子レンジや炊飯器など身近な調理器具で作れるレシピや、包丁を使わずにハサミやスライサーで下処理できる工夫があると、からだへの負担を軽減できます。また、写真付きの手順説明で各工程が視覚的に分かりやすく構成されている本を選ぶことで、料理への不安を解消し、日々の食事づくりが楽しくなります。書店で実際にページをめくり、文字サイズや写真の大きさ、工程説明の分かりやすさを確認することをおすすめします。
選び方(3)食べやすさや噛みやすさへの配慮があるか
シニア向けスープ料理本を選ぶ際は、食材の切り方・調理法・とろみ付けなど、噛む力や飲み込む力の低下に対応した具体的な工夫が書かれているかを確認しましょう。このような配慮がなされていることが、重要なポイントです。
肉は叩いたり皮や脂身を取り除く、野菜は時間をかけて加熱し歯ぐきでつぶせるくらいにやわらかくする、隠し包丁を入れると噛み切りやすくなるなど、調理技術によって同じ食材でも劇的に食べやすさが変わります。優良な料理本には、繊維を断ち切る切り方の図解説明や、白身魚のホワイトグラタン風のような自然にやわらかく仕上がる調理法が詳しく紹介されています。また、市販のとろみ調整食品を使った安全な嚥下への配慮や、ポタージュ状にする際のミキサーの使い方まで解説されている本なら、段階的に食感を調整できて安心です。
選び方(4)作りおき・冷凍保存の方法が紹介されているか
効率的な食事管理を実現するためには、スープベースの冷凍保存法や小分け方法、リメイクレシピが具体的に説明されている料理本を選ぶことが大切です。シニア世代では1〜2人分の調理と作り置きの両立が重要な課題となっており、野菜たっぷりのスープベースを冷凍し、解凍時に卵や豆腐をプラスするレシピや、製氷皿を使った1食分ずつの小分け冷凍法などの工夫があると便利です。また、体調が優れない日でも手軽に栄養のある食事を摂ることができます。購入時は作り置きレシピの割合と保存期間の記載を確認し、冷凍容器の選び方や解凍時の注意点まで説明されている実用性の高い本を選びましょう。
おすすめのシニア向けスープ料理本5選
この章では、2024年から2025年にかけて注目されているシニア向けスープ料理本の中から、特におすすめの5冊を詳しく紹介します。
それぞれの本には独自の特徴と強みがあり、読者の生活スタイルや健康状態に合わせて選択できるよう構成されています。
- 77歳の料理研究家による最新の共感型スープ本
- 電子レンジ調理のパイオニアによる80歳の遺言レシピ
- 管理栄養士監修によるたんぱく質強化の科学的アプローチ
- スープ作家による電子レンジ活用の時短レシピ
- 作りおき・冷凍保存に特化した実用的なスープ本
おすすめ(1)石原洋子「からだが整うスープ」
2024年11月29日に出版された、77歳の石原洋子さんによる最新作『77歳、石原洋子のからだが整うスープ』は、シニア世代の当事者目線で書かれた共感性の高い料理本です。著者自身も77歳と読者と同世代なので、シニアの食の3大悩みである「栄養不足」「作る気力の減少」「食事量の減少」を実体験から理解しています。そのため、机上の理論ではない実践的なアドバイスが随所に盛り込まれています。
第1章「たんぱく質と野菜たっぷりのひと皿安心スープ」では鶏肉・しいたけ・白菜のスープやさば缶のカレースープなど、第2章「作りおきが便利な即席スープ」、第3章「一生作り続けたいわが家の定番スープ」という構成で、日常的に作れるレシピから特別な日のメニューまで幅広くカバーしています。同世代の経験者からの温かいアドバイスを求める方に最適で、Amazon評価4.4の高評価も実際の読者支持の証拠となっています。
おすすめ(2)村上祥子「80歳遺言レシピ」
料理研究家として50年以上のキャリアを持つ村上祥子さんが、500冊以上の著書の集大成として発表した『80歳 遺言レシピ』は、電子レンジ調理の最高峰と言える一冊です。電子レンジ調理には、「少量でもおいしく作れる」「重い鍋やフライパンがいらない」「火加減の調整が不要で焦げつきの心配もない」など、多くのメリットがあります。これらの利点は、シニア世代が抱える調理の悩みを根本から解決してくれるものです。
本書の大きな特徴は、8種類の「長生き調味料」を使った健康効果の高いレシピが豊富に掲載されていることです。例えば、血行促進には「酢玉ねぎ」「酢キャベツ」、温活には「オイルしょうが」「しょうゆしょうが」、たんぱく質強化には「サバそぼろ」など、それぞれ目的に応じた調味料を活用しています。また、作り置きできる調味料のベースレシピから、「電子レンジ調理は苦手」という方にこそ試してほしい100品のレシピまで、実用的な内容が満載です。
コンロでの調理に不安を感じる方や調理時間を短縮したい方に特におすすめできます。
おすすめ(3)たんぱく質を強化した健康スープ本
管理栄養士である藤井恵さんの『身体がととのう長生きスープ 新装版』は、科学的根拠に基づいたたんぱく質強化レシピの決定版として注目されています。高齢者が筋肉量を増やすためには1食あたり20g程度のたんぱく質摂取が必要とされる中、「つくりやすくておいしい、栄養のバランスのとれた料理を提供したい。家族の元気は日々の食卓から」をモットーにした管理栄養士が監修していることで、栄養学的な信頼性が担保されています。野菜を丸ごと使う「ポタージュ」と、下味をつけた肉や魚を使う「下味冷凍スープ」の2種類のアプローチを紹介し、減塩でも美味しく仕上がる「玉ねぎ麹」のレシピも掲載されています。料理レシピ本大賞2020準大賞受賞の実績もあり、フレイル予防や筋力維持を真剣に考えている方、栄養成分にこだわりたい方、科学的根拠のあるレシピを求める方に最適です。
おすすめ(4)電子レンジで簡単に作れるスープ本
スープ作家・有賀薫さんのレシピ集は、電子レンジを活用した「レンチンでできる」簡単スープの宝庫で、忙しい日の救世主となる存在です。有賀さんは約7年間、毎朝スープ作りを続けており、これまでに作ったスープは2500種類以上にのぼります。その圧倒的な経験をもとに、食材2つで作れる汁物レシピや、「レンジでチンするだけ」「お湯を注ぐだけ」でできる驚きの時短メニューを提案しています。こうした工夫により、誰でも無理なくスープ作りを続けられる簡単さが実現されています。
豆苗とベーコンの豆乳スープ(電子レンジ調理)、たたきオクラとツナの和風スープ(お湯をかけるだけ)など、包丁すら使わない超時短レシピが特徴的で、『帰り遅いけどこんなスープなら作れそう』『朝10分でできる スープ弁当』など、シチュエーション別の著書も豊富に展開されています。料理初心者の方や朝食にスープを取り入れたい方に特におすすめです。
おすすめ(5)名医が考案した健康長寿スープ
川嶋朗医師、高橋弘医師、牧田善二医師、石原新菜医師の合計4名が監修した『名医が考案した健康長寿スープ』は、豊富な臨床経験に基づき、多くの患者の食事指導に携わってきた医師によるスープレシピ集として注目を集めています。監修した医師たちは、それぞれ専門分野の第一線で多くの患者を診察し、食事療法を用いた健康指導に数多く取り組んできた実績があります。そのため、机上の理論ではない実際の治療現場で効果が実証された実践的なレシピが豊富に掲載されています。
第1章「血管を若返らせる長寿スープ」では動脈硬化予防に効果的なDHA・EPAたっぷりのサバ缶トマトスープや血圧降下作用のあるカリウム豊富な根菜スープなど、第2章「脳を活性化する認知症予防スープ」、第3章「筋力アップのたんぱく質強化スープ」という構成で、シニアが抱える主要な健康課題に対応したレシピを体系的に紹介しています。第1章「血管を若返らせる長寿スープ」では、動脈硬化予防に役立つDHA・EPAがたっぷり含まれたサバ缶トマトスープや、血圧を下げる効果が期待できるカリウム豊富な根菜スープなどを紹介。第2章では脳血管や免疫の健康に配慮したスープ、そして第3章では筋力維持を助けるたんぱく質強化スープといった構成で、シニア世代が抱える主要な健康課題に対応するレシピが体系的に掲載されています。
各レシピには栄養成分表示に加えて、なぜその食材の組み合わせが健康に良いのかという医学的根拠も詳しく解説されており、納得して料理を楽しめる内容となっています。各レシピには栄養成分表示に加え、「なぜその食材の組み合わせが健康に良いのか」という医学的な根拠も丁寧に解説されています。DHA・EPAが血液サラサラ効果で心臓血管の健康を支えることやカリウムが塩分の排出を促して血圧コントロールに寄与すること、たんぱく質が筋肉の修復・維持に不可欠であることなど、専門的な知見がわかりやすく紹介されているため、納得して料理を楽しめる内容となっています。 医師の専門的なアドバイスを日々の食事に取り入れたい方、科学的根拠に基づいた健康管理を実践したい方に最適で、日本栄養士会推奨の高評価も信頼性の証となっています。医師の専門的アドバイスを日々の食事に取り入れたい方、科学的根拠に基づいた健康管理を実践したい方にとって最適の一冊です。なお本書は管理栄養士など食の専門家からも高く評価されており、レシピの信頼性と実用性の高さがうかがえます。
健康課題別に見るおすすめスープ本は?
この章では、シニア世代が抱える代表的な健康課題に特化したスープ料理本の選び方について詳しく紹介します。
個人の健康状態や体の変化に応じて最適な一冊を見つけることで、より効果的な食事管理が可能になります。
- 高血圧予防・管理のための減塩技術に特化したスープ本
- 咀嚼や嚥下機能の低下に配慮したやわらかスープ本
- フレイル予防・低栄養対策のための高たんぱくスープ本
課題別(1)高血圧向けの減塩スープ本
高血圧対策で1日の塩分摂取量6g未満を目指すシニアには、減塩技術に特化した料理本が欠かせません。
日本人の平均塩分摂取量は国民健康・栄養調査(2023年実施、2024年公表)では、成人男性の平均摂取量は10.2g、女性は8.7gと世界保健機関推奨の5gを大幅に上回っているため、効果的な減塩技術の習得が重要になります。聖路加国際病院の医師と管理栄養士が監修した高血圧患者向けのレシピ集や、藤井恵さんの「玉ねぎ麹」を活用した減塩技術が学べる料理本がおすすめです。例えば、旨みの強い魚介類やきのこの組み合わせ方、レモンなど酸味を加えて味にメリハリをつけるコツ、じゃがいも・さつまいも・わかめ・ほうれん草・なすなどカリウムを多く含む食材の活用法、さらには牛乳やヨーグルトを使った「乳和食」の技術などが詳しく紹介されています。こうした工夫により、減塩でも満足感のある美味しいスープ作りが可能になります。
課題別(2)咀嚼が困難な方向けのやわらかスープ本
噛む力や飲み込む力が低下した方は、専門家が監修した嚥下(えんげ)に配慮したスープ料理本を選ぶようにしましょう。日本摂食嚥下リハビリテーション学会が定めた「嚥下調整食分類2021」の基準に沿ったレシピが掲載されている本であれば、安心して調理を楽しめます。
嚥下障害は食べ物を上手く飲み込めないために栄養不良や脱水状態を招き、誤嚥性肺炎を引き起こす可能性があるため、個人の食べる能力に合わせた工夫が欠かせません。とろみ調整については、薄いとろみ(スプーンを傾けるとスーッと流れ落ちる)、中間とろみ(トロトロと流れる)、濃いとろみ(流れない)の3段階に分けた技術が重要で、白身魚のホワイトグラタン風やかぶのクリーミーシチューのような自然にやわらかく仕上がる調理法が具体的に紹介されている本が理想的です。また、蒸し器や圧力鍋を活用した時短やわらか調理の技術も学べる内容が含まれていると実用性が高くなります。
課題別(3)低栄養を防ぐ高たんぱくスープ本
フレイル予防には、体重50kgの人で1日あたり50〜60gのたんぱく質摂取が一つの目安とされています。また、「さあにぎやか(に)いただく」と表現されるように、10品目の食品群のうち毎日7品目以上を食べることが推奨されます。こうした条件を満たす高たんぱくスープ料理本を選べば、フレイル対策に効果的です。
低栄養状態では筋肉量や筋力が低下したサルコペニアを併発し、転倒しやすくなり骨折の危険性が増加するため、日々の食事でのたんぱく質確保が重要な要素となります。管理栄養士である藤井恵さんの下味をつけた肉や魚を使う「下味冷凍スープ」技術や、味の素クノールの「たんぱく質がしっかり摂れるスープ」シリーズなど市販品の活用法も含まれた本が実用的です。魚の缶詰は手軽でちょっと魚を使いたい時に便利で長期保存可能なため、非常食としても優れた食材として活用できます。管理栄養士が監修した科学的根拠に基づくレシピ本を選ぶことが大切です。また、スーパーやドラッグストアで手に入る高たんぱく質のスープやインスタント味噌汁を併用すれば、無理なく食事管理を続けやすくなるでしょう。
シニアにスープをすすめるメリットとは?
この章では、なぜシニア世代にスープ料理が特におすすめなのか、その具体的なメリットについて科学的根拠と実践的な視点から詳しく解説します。
シニア向けスープの優れた特性には主に以下の内容があります。
- 加齢による消化機能の変化に配慮した胃腸への優しさ
- フレイル予防に必要な栄養素を効率的に摂取できる利便性
- 高齢者特有の脱水リスクを予防する水分補給機能
- 咀嚼・嚥下機能の低下に対応した食べやすさと安全性
メリット(1)消化に優しく胃腸への負担が少ない
温かいスープは体を内側から温め、胃腸の働きを穏やかに助けるため、消化機能が低下しがちなシニア世代にとって理想的な食事形態です。加齢とともに胃酸の分泌量が減少し、消化酵素の働きも弱くなるため、高齢者は消化に時間がかかり胃もたれや消化不良を起こしやすくなります。野菜を長時間煮込んだポタージュは繊維が柔らかくなり、肉や魚も煮込むことで筋繊維がほぐれて消化しやすくなります。石原洋子さんの料理本で紹介されている鶏肉・しいたけ・白菜のスープは、鶏肉のうま味を水からじっくり引き出すことで、とても優しい味わいに仕上がります。また、白菜の自然な甘みがスープに溶け出し、心安らぐ一品になります。胃腸が弱い方や食欲不振の方は、まず温かいスープから食事を始めることで胃腸を温めて消化機能を活性化させることができます。
メリット(2)野菜とたんぱく質を効率よく摂れる
スープは「一品で栄養満点」を実現できる最も効率的な料理形態で、シニアの食の3大悩みである「たんぱく質などの栄養不足」「作る気力の減少」「食事量の減少」を同時に解決します。従来の「一汁三菜」を用意する場合と比べ、スープなら肉・魚・野菜・豆類など様々な食材を一つの鍋で一度に調理できます。その結果、調理の手間と洗い物が大幅に減り、フレイル予防に必要な多様な栄養素も効率よく摂取できます。例えば、さば缶を使ったカレースープなら、カルシウムやDHA・EPAなどの重要な栄養素を手軽に摂取できます。また、藤井恵さんの「下味冷凍スープ」を活用すれば、下味をつけて冷凍しておいた肉や魚を野菜と一緒に煮ることで、一食で20g以上のたんぱく質を摂ることも可能です。
フレイル予防のために体重50㎏の人なら50g~60gのたんぱく質が必要とされているため、毎食たんぱく質源を必ずスープに加えることが重要です。
メリット(3)水分と栄養を同時に補給できる
年齢とともに喉の渇きを感じにくくなる高齢者にとって、スープは食事の中で自然に水分を補給できる優れた脱水予防手段となります。高齢者は無意識のうちに水分不足に陥りがちで、脱水状態は熱中症、便秘、血液の粘度上昇による循環器疾患のリスクを高めます。スープなら水分補給と栄養摂取を同時に行えるため、意識的に水を飲むのが苦手な方でも美味しく継続的な水分補給が可能になります。例えば、有賀薫さんの「たたきオクラとツナの和風スープ」のように、お湯を注ぐだけで作れるスープもあります。オクラの自然なとろみが水分補給を促し、飲めば体がじんわりと温まります。
また、村上祥子さんの電子レンジ調理法を使えば、野菜から出る水分ごと栄養を余すところなく摂取できます。栄養補給と水分補給を同時に行えるので、より効率的な健康管理に役立ちます。
1日の水分摂取目標として食事以外に1000~1500mlの水分が必要ですが、スープを毎食取り入れることでこの目標達成が格段に容易になります。
メリット(4)嚥下機能が低下しても食べやすい
スープは噛む力や飲み込む力が低下してきた方にとって、安心して食べられる最も安全な料理形態の一つです。日本摂食嚥下リハビリテーション学会の「嚥下調整食分類2021」でも示されているように、適切な形態に調整されたスープは誤嚥性肺炎のリスクを大幅に軽減できます。ポタージュのような滑らかな食感や、とろみを適切につけたスープは喉を通りやすく、消化器官への負担も軽いという特徴があります。とろみ調整については、薄いとろみ(スプーンを傾けるとスーッと流れ落ちる)から濃いとろみ(流れない)まで3段階の調整が可能で、個人の嚥下能力に合わせた安全な食事が提供できます。白身魚のホワイトグラタン風やかぶのクリーミーシチューのような、自然にやわらかく仕上がる調理法なら見た目も美しく食欲をそそる仕上がりになります。嚥下に不安がある場合は医師や言語聴覚士に相談してから調理法を決定し、市販のとろみ調整食品を適切に使用することが重要です。
シニアがスープ中心の食事にするデメリットは?
この章では、スープ料理の多くのメリットがある一方で、スープ中心の食事にした場合に注意すべきデメリットについて客観的に解説します。
適切な対策を知ることで、これらの課題を回避しながら健康的なスープ生活を送ることが可能になります。
- 食材の選択や調理法による栄養バランスの偏りリスク
- 温度管理の難しさと食欲への影響
- 咀嚼機能の維持と認知機能への配慮の必要性
デメリット(1)具材の形状により栄養が偏る可能性
スープ中心の食事では、食材の選択や調理法によって特定の栄養素が不足したり、食材の多様性が制限される可能性があります。フレイル予防のためには、「さあにぎやか(に)いただく」で示される10品目の食品群のうち毎日7品目以上を食べることが推奨されています。しかし、スープだけに頼っていると食材の種類がどうしても限定されがちです。
例えば、ポタージュ状の野菜スープばかり飲んでいると、生の野菜でしか摂れないビタミンCや酵素が不足する恐れがあります。また、やわらかい食材ばかりを使ったスープでは、鉄分や亜鉛などのミネラルが不足しがちです。また、長時間の加熱により熱に弱いビタミンが破壊される場合もあるため、週単位で食材の多様性をチェックし、スープ以外の食事も適度に取り入れることが重要です。管理栄養士監修の料理本を活用し、栄養バランスの取れたスープレシピを選択することで、この問題を軽減できます。
デメリット(2)冷めやすく食欲が落ちることがある
スープは他の料理に比べて冷めやすく、温度が下がると風味が損なわれ、食欲低下につながる可能性があります。スープは温かさが魅力の一つですが、水分量が多い分、冷めやすいという欠点もあります。特に、ゆっくりと少量ずつ食べるシニアの場合、飲み終わる前にスープが冷めてしまうことも少なくありません。
冬場の室温が低い環境では、スープが5分程度で食べ頃の温度を下回ってしまい、陶器の深皿よりもステンレス製の器の方が熱が逃げやすいなど、器の選択によっても温度保持に差が生じます。冷めたスープは味が薄く感じられ、油分が浮いて見た目も悪くなりがちです。保温性の高い器の使用や魔法瓶タイプのスープジャーの活用、電気保温トレーの使用により、この問題を解決できます。有賀薫さんの著書で紹介されているような、冷めても美味しいスープレシピを選択することも有効な対策となります。
デメリット(3)咀嚼機能維持には固形物が必要な場合も
スープ中心の食事では咀嚼の機会が減少し、「噛む力」の維持や認知機能の活性化に必要な刺激が不足する可能性があります。「しっかり噛んで食べる」ことは脳や身体の活性化につながり、認知症や寝たきりの予防効果があることが知られていますが、やわらかいスープばかり摂取していると、咀嚼筋の筋力低下や顎関節の機能低下を招く恐れがあります。また、固形物を噛む習慣を失うと唾液の分泌量も減り、口腔環境の悪化や消化機能の低下につながる恐れがあります。
個々の咀嚼能力に応じて、スープにも適度に噛みごたえのある具材を残すことが大切です。さらに、スープと一緒に適度な硬さの副菜を組み合わせて食べるようにしましょう。
また、歯科医師や言語聴覚士に相談し、その人が安全に食べられる中で最も噛みごたえのある食事形態を維持することも大切です。
シニアでも簡単に作れるスープの調理のコツ
この章では、シニア世代が日々の生活で実践できる、簡単で効率的なスープ調理のコツについて詳しく解説します。料理研究家たちが長年の経験から編み出した技術を活用することで、手間をかけずに美味しく栄養満点のスープを作ることができます。
- 食材の下処理と時短調理で負担を軽減する技術
- 減塩でも満足感のある味づくりの秘訣
- 市販の便利食材を活用した効率的な調理法
- 作り置きと保存で継続しやすい食事管理の仕組み
コツ(1)食材を小さく切り煮込み時間を短縮する
食材を小さく均等に切ることで、煮込み時間を大幅に短縮でき、シニアの体力的負担を軽減できます。例えば、にんじんやじゃがいもは1cm角程度に切れば、約5分で火が通ります。肉類も薄切りや細切りにすれば、短時間で柔らかくなります。
有賀薫さんの料理本では、玉ねぎのみじん切りと卵の組み合わせで、わずか5分で本格的なスープが完成する技術が紹介されています。小さく切った食材は消化もしやすく、咀嚼力が低下したシニアの胃腸に優しい調理法としても理想的です。包丁作業が負担な場合は、フードプロセッサーやハサミを活用して食材を小さくカットしましょう。
コツ(2)だしの旨みを効かせ減塩でも満足感を得る
昆布やかつお節、干ししいたけなどの天然だしを使うことで、塩分を控えめにしても旨味のあるスープが作れます。また、藤井恵さん考案の「玉ねぎ麹」のような発酵調味料を活用すれば、さらにコクのある味わいを出すことができます。
高血圧対策として1日の塩分摂取量6g未満が推奨される中、うま味成分を豊富に含む天然だしを使うことで、少ない塩分でも十分な満足感が得られます。石原洋子さんのレシピでは、鶏のうま味を水から引き出し、しいたけと白菜を加えることで、塩分控えめでも心やすらぐ優しい味わいを実現しています。市販の減塩調味料から始めて、徐々に天然だしの技術を習得していくことをお勧めします。
コツ(3)冷凍野菜を活用して手間を省く
下処理不要で栄養価の高い冷凍野菜を積極的に活用しましょう。調理の手間を大幅に省けるうえ、年間を通じて安定した栄養摂取が可能になります。
冷凍野菜は収穫直後に急速冷凍されているため、栄養価が高く保たれており、皮むきや切る作業が不要なため、シニアの調理負担を大幅に軽減できます。村上祥子さんの電子レンジ調理では、冷凍ブロッコリーやほうれん草をそのまま加熱することで、解凍と調理を同時に行う技術が紹介されています。冷凍ミックスベジタブルを使えば、にんじん、コーン、グリーンピースが一度に摂取でき、彩りも美しいスープが完成します。さば缶と冷凍野菜を組み合わせれば、包丁を使わずに栄養満点のスープが10分以内で作れます。
コツ(4)一度に多めに作って小分け冷凍保存する
藤井恵さんの「下味冷凍スープ」や石原洋子さんの「即席スープ」など、作り置きの技術を積極的に活用しましょう。そうすれば、体調が優れない日でも手軽に栄養のある食事を摂ることができます。シニア世代では体力や気力に波があるため、元気な日にまとめて調理しておくことで、調理が困難な日でも安心して食事を摂ることができます。製氷皿を使った1食分ずつの小分け冷凍法では、必要な分だけ解凍できて無駄がありません。お湯を注ぐだけで完成する「みそ汁の素」や、冷凍しておく「ポタージュの素」なら、調理時間を数分に短縮できます。まずは簡単な「みそ汁の素」から始めて、慣れてきたら冷凍ポタージュやスープベースに挑戦することをお勧めします。
まとめ
本記事では、シニア世代の食事の悩みに応えるスープの料理本を、選び方のポイントと共に5冊厳選してご紹介しました。
毎日の料理が負担にならず、手軽に栄養バランスを整えられるスープは、シニアの健康維持の強い味方です。ご紹介した「調理の手軽さ」「健康への配慮」「食べやすさ」といった観点から、ご自身の体調やライフスタイルに合った一冊は見つかりましたでしょうか。
この記事を参考にあなたにぴったりの料理本を見つけ、温かいスープで心も体も満たされる、健やかで楽しい毎日をお送りください。